横浜が誇る老舗映画館「横浜日劇」(1957年開業)が4月に取り壊されることに。解体を前に昨日と今日の2日間、特別内覧会と映画「ニュー・シネマ・パラダイス」の上映を行うと新聞で知り、今日行ってきた。
12時30分開演で、その15分くらい前に到着するとすでに長蛇の列。順次中に入り、2階の映写室を見せてもらったり、レトロな建物をしみじみ眺めて感慨にふけったり。
後から後から人がやってくる。老若男女、日劇がこんなにたくさんの人で埋め尽くされるのは初めて見た。いつもこんなに盛況なら取り壊されることもなかっただろうに。そのことは皮肉だけれど、長い歴史をもっていること、多くの人に愛されていることを改めて強く実感させられる。
暖房設備が壊れているらしく、野外のように冷え切ったなか「ニュー・シネマ・パラダイス」を鑑賞。最後の上映会にじつにぴったりで、映画の内容にも泣けるのだけど、この映画を映し出しているスクリーンも、座っている椅子も、何もかもなくなってしまうのだという思いとがリンクして、余計にこみあげるものがあった。
観終わって、拍手。泣きすぎて、立ち上がったらくらくらっとした。
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05年に閉館後、日劇再生準備委員会が設立され再利用の道を探っていたらしいけど、ついに取り壊し…本当に残念。
わたしはここで高校生だか大学生のころ、アラン・ドロンの「冒険者たち」を観たのを覚えてる。映画「私立探偵 濱マイク」シリーズの舞台となったころには弟がアルバイトをしていて、永瀬正敏を見たとか言っていたなあ。
ソイポケ2号では「横浜の下町を歩く」というテーマでこのあたり(黄金町)を取材した。
あのころはまだ違法な売春行為を行う小規模店舗が立ち並んでいたけれど、05年の一斉摘発により一掃され、今はゴーストタウンに。
でも、「残された店舗を健全な形で再利用し、黄金町を人が集まる場所へ変えていくこと」を目的とした、
黄金町プロジェクトという動きもあるようで、なんとも頼もしい。
日劇のすぐそばにある「シネマ・ジャック&ベティ」(この映画館も大好き)を運営し、横浜の映像文化の拠点を目指すというから、心より応援したいと思う。
横浜の良質な映画館は、オデヲンや関内アカデミーなど、あれもこれも消えてゆくので、ジャック&ベティには最後の砦としてぜひがんばってほしい。
ジャズ喫茶の「ちぐさ」も閉店してしまったし、氷川丸とマリンタワーも閉館。横浜の誇るべき文化がどんどん消えていく。なんでこんなに歴史ある素晴らしいものをみすみす失わなければならないんだろう。どうして守る方向で進めることができないんだろうか。
時代の流れだ、仕方ない、といえばその通りだろうけど、でも、そんな言葉で簡単に片付けたくないという思いもある。
いったい、古いものを取り壊すことでどんな文化を育てたいのだろうか。市の重要建築物として残すことはできなかったんだろうか。横浜だけでなく、日本という国のあり方にもかかわってくることなんだと思うけれど。
美しい国って、どんな国なんだろう。
(映画観賞後外に出ると、劇場前に「私立探偵 濱マイク」で使われたオープンカーが登場してた(右))