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佐藤正午「Y」
ミステリーです。これは面白い!! 続きが気になって夜更かしして一気に読み上げてしまう、っていう経験は久々だった。
あのときこうしていればわたしの運命は変わったかもしれない…って思ったことのあるひと、今も思っているひと、ぜひ読んでみてください。
「あのとき」に戻ることができたとして、よりよい人生が待ってるかどうかは…! 待ってるかもしれないし、待ってないかもしれない。
ネタばれになるからこのへんで。
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坂口三千代「クラクラ日記」
これも面白い。坂口安吾の奥さんの日記っていうか随筆っていうか、安吾とともに生きた記録です。
“クラクラ”っていうのは野雀っていう意味で、三千代さんが銀座でやっていたバーの名だそう。
あとがきで松本清張氏も書いているように、ほんと、どこの世界に夫がアドルムとヒロポン中毒になったからといって、一緒にヒロポンを飲んで介護する妻がいるだろうか。
安吾が狂人になっちゃって暴れるなど、凄惨な状況がなんとも屈託のない文章で書かれていることに驚くのだけど、ほんとうに好きになってしまうってのはこういうことなのだなあ、と思いながら読みました。
生来、女の人のもつ力のようなものを感じます。
ちなみにわたしは坂口安吾ってほとんど読んだことがなくて、これ読んで読もうかと思ったものの、とっつきにくい感じがしてどうもだめ……。
この間も、西荻の音羽館にて坂口安吾の本(講談社文芸文庫)を見つけて、ぱらぱらめくると、歴史ものがちらほら。歴史ものは苦手なので、買おうとして戸棚から引っ張り出し、またしまい、また引っ張り出して、やっぱり…としまったり…で、結局買わなかった。
でも、「桜の森の満開の下」と、三千代さんを登場させているという「青鬼の褌を洗う女」だけは読みたいと思ってる。
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町田康・いしいしんじ「人生を救え!」
これも面白い(面白いばっかり書いてるね、わたし)。
前半は、新聞に連載していた、町田康の人生相談コーナーをまとめたもの。後半は、町田康といしいしんじが二人で、丸の内とか浅草とかお台場とかに行って語り合うのをまとめたもの。
人生相談も面白かったけど、後半の対談が面白かったなー。
会社ってものについて語る部分とか。入社イコール仕事ではなくて、邪魔にならない程度に「働く」。働きすぎてもかえっていけない、って議論は、会社生活10年のわたしには、頷けるところがあった。
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最近本を読むときは、会社というものにえらく敏感になっている。
今までとは違った見方で読むようになった。
たとえば、石垣りんさんの本を読んでいると、この方は定年まで銀行勤めをされながらずっと詩を書かれた方で、なんだか、わたしはドロップアウトするみたいで後ろめたい気分になったり。
そうかと思えば、人生でどこにも属さず、好きなことだけする期間があったっていいんじゃないか、と考えてわたしくらいのときに会社を辞めたひとのことを読んで、ああ、いいんだ、って思ったり。
ひとはなかなかその立場にならないと気持ちがわからないものだなあと思う。
たぶんわたしは知らず知らずひとを傷つけるようなことを言ってしまってるのだろうな、とも思う。そのくらい、ひととひととの関係は難しい。だけど、難しいとばかり言っていては、何も始まらない。